「ローマ人の物語XIV キリストの勝利」
(塩野七生著、新潮社)
西暦337年から395年、四世紀のローマ帝国を襲った変化の歴史を描いている。
ローマ帝国の終焉は、地理的感覚から見れば蛮族の侵入をローマ軍で防ぐことができなくなったことが理由のように見える。しかしながら国家的感覚から見ればこの理由だけでは足りない。むしろ、ギリシャ・ローマの多神教の世界からキリスト教の世界に百年程の時間をかけゆっくりと変わって行った事の方が大きな理由なのではないか。ローマ帝国の主神がユピテルからキリストになった時、ローマの一千年余の歴史が幕を閉じたのだろう。
日キリスト教徒である日本人著者がローマの歴史を語ることの大きなメリットがこの巻で明らかになると言えると思う。
ローマの美術、芸術、文学、思想が、一宗教の帝国乗っ取りによりほとんど全て破棄されてしまったのは、歴史の帰結とはいえもったいない限りである。皇帝や国民の大部分が特定の宗教、思想に突っ走った時、それを是とできない人々は、自分達の歴史を守ることができるだろうか。そうした感想を抱かざるを得ない。
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