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2006年6月13日 (火)

「タイタンの妖女」

(カート・ヴォガネット・ジュニア著、浅倉久志訳、ハヤカワ文庫)

 奇妙な本で、面白いと言われながら本屋に並んでいることが少なく、手に入れることが割りと難しい本ってありますが、これがまさにそう。
 紀伊国屋書店が何を血迷ったか「じゃあ切れないように百冊入荷してやるから買って読め!」とか勝負に出て、おかげで手に入れることができました。趣味で入荷するなよな・・・

 SFです。
 ある事件で全能者となったウインストン・ナイルス・ラムファードは、地球を救うため無慈悲にも自分の妻と、地球一の大富豪を利用して世界を改造してしまいます。
 それに費やされた人命は多数。
 そして、ウインストンのタイタンでの親友であり協力者、マゼラン星雲からの旅人サロとその母星が地球人類に及ぼした影響が次第に明らかになります。
 物語は決して救われることはありません。
 しかし、それでも最後を含め、ところどころにちょっと仕掛けを残しています。読者が幾ばくかでも救われるように。

 ある意味おそろしい話の流れです。ところどころにギャグを散りばめながら、決して登場人物が救済されることは無い。誰も助けてくれない。仕掛けに抗うことも困難を要し、しかも登場人物が運命に抗うこと自体が仕掛けであるという困った仕組みを取っています。
 こんな物語を紡ぐ人は、天才であり、しかも半分狂っていると思わざるを得ない。
 でも、面白い。この作者は天才だ。そう思わせるSFです。

 この本の中で一番気に入っているのは、実は目次と題名の間のこの記載です。

  本書の中の人物、場所および事件は、すべて実在する。ただし、一部の談話および思考は、やむをえず著者の解釈で構成した。無辜の者を保護するためにあえて名称を変えることはしなかった。無辜の者の保護は、全能の神が天国の日常作業の一部としてなされているからである。

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