「天冥の標 V 羊と猿と百掬の銀河」(小川一水)
第5巻。
今回は第3巻、第4巻からもうちょっとだけ後のお話で、場所は同じく小惑星帯メインベルト。
この巻の主人公は農家のタック。
これまでと異なり主人公は第1巻~第4巻に絡んでないように見えます。
主題はタックの娘ザリーカ。
農家を離れて都会での暮らしに憧れをもつ少女ザリーカは、やがてその存在を狙われるようになります。
それは、彼女がイシスのクローンだから。
ドロテアに接触できたイシスの後継として組織に狙われていたのでした。
ノイジーラント、すなわちアンチオックスの活躍でザリーカの奪還は成功しますが、背後の組織がなんかおかしい。
小惑星帯は準戦時状態になってしまいます。
もう一つおかしいことが小惑星帯のタックたちの農場でも起こります。
かつて火星を不毛の地に変えたレッドリート、強大な繁殖力で他の植物を駆逐してしまう恐怖の農作物がタックの知人の農場で見つかるのです。
なぜこんなに凶暴な植物種が出てきてしまったのか、謎とは思いませんか。
そして今回はもう一人(?)主人公がいます。
ノルルスカインです。
ノルルスカインが別の遠い銀河で”発生”し、生まれた星を離れ宇宙を旅する間に友人ミスチフができ、別れます。
そして長い歳月の後ミスチフと再会したとき、それは災厄の姿となっていました。
オムニフロラ、ミスチフを取り込んでしまった植物型生命は、やがてノルルスカインの副存在をも飲み込んで、近隣の星々に銀河に、果ては銀河団にあまねく繁茂してしまったのでした。
ノルルスカインはオムニフロラに勝てないばかりかオムニフロラの侵攻を止めることもできません。
ただ、オムニフロラの侵攻を邪魔して速度を緩めるだけ。
邪魔しながら逃げて逃げて、さらに別の銀河団へ逃げて、そして地球にたどり着きます。
ざっと紀元前2千年。
ダダーとなったノルルスカインはその後、救世群、医師団、アンチオックスと交流をもちます。
しかし既に8500年前、3千万年かけて他の銀河団から渡ってきたオムニフロラが木星に前進基地を作っていたのでした。
そして24世紀、それに起因したと思われる謎の団体が太陽系内でさまざまな地下活動を行っている時、ふたご座の方向から近づいてくる異星船が発見されます。
太陽系への到着まで100年。
第5巻までで全体像がかなり明らかになってきました。
災厄とも言える宇宙規模で無敵の存在が既に紀元前に太陽圏に到着し、その支配活動を着々と進めていたのです。
それに対するダダー、ノルルスカインは後手に回ってしまったようです。
その状態で人類は相手と相対することになったのでした。
さて次は第6巻ですが、文庫で3分冊なんですよね。
どうしたものやら。
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