「労働者の味方をやめた世界の左派政党」(吉松崇)
かつては左派といえば労働者の味方でした。
ところが現在ではどこの国でも左派はエリートのための存在になってしまっています。
アメリカ、フランス、イギリスで政治エリートではない団体や人物が選ばれたり多くの得票を得たりする状況について、これをポピュリズムという評価がありますがこれは違うのではないかというのが本書の視点です。
最近有名になったフランスの経済学者ピケティの「西欧先進国では左派政党が大きく変質して、もはや労働者の味方ではなくなった」という論文がこの視点を解くヒントとなります。右も左も商人エリートや知的エリートになってしまって、いわゆるブルーカラーの味方がいなくなった状態です。
同じ流れで日本では弱者のための政党がなくなりました。また外国人労働者の重要性ばかり喧伝されて日本の労働者のことを考えてくれる人はいなくなりました。
EUではもっと混乱しています。ドイツは中東の難民が増加した際、人道主義を優先しほぼ無制限に受け入れるような格好になりました。その結果EUで大変な混乱が生じており、中には政権が変わった国さえ出てきました。イギリスはとうとうEUから出ていくことを選択しましたが、それとて茨の道が予想されています。
また、世界でなぜか緊縮財政や財政健全化が目的化していて、経済成長が妨げられて失業率の悪化などを引き起こしています。
移民難民政策、緊縮財政、消費税増税など理論上良いように見える政策は、全て労働者にとっては打撃を与える政策で、これを右の商人エリートだけでなく、左の知的エリートが推奨しているのです。
日本では左派が労働者の味方になっていません。
今の自民党政権の方が弱者を救い上げる形になっています。
左派が国民の方を向かない限り、左派に支持は集まらないでしょう。
現状では左派は理論を優先しているように見えますが、もし日本の左派にやる気があるならEU各国を見習った方が良いでしょうね。
野党がダメだと与党も腐ってしまうので、それは避けて欲しいところです。
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