「りゅうおうのおしごと!」(白鳥士郎)
この「りゅうおうのおしごと!」は将棋や棋士を描いたライトノベル作品です。
現在15巻まで刊行されています(ブログ主はまだ13巻まで読んだところです)。
史上4人目の中学生プロ棋士である九頭竜八一は若干16歳にして最年少の竜王となります。
しかし竜王になってからは調子を崩してしまいます。
そんな八一のところに小学生の雛鶴あい弟子入り志願してやってきます。
姉弟子の空銀子や師匠とその娘である清滝父娘を交えて、騒々しくも熱い将棋の世界が繰り広げられます。
ライトノベルではありますが1巻から順々に将棋の世界が素人にもわかりやすく説明されていきます。
そして魅力的な登場人物たち。
八一のライバルである神鍋歩夢とその師匠の釈迦堂、清滝師匠の兄弟子で八一を温かく見守る月光会長、そしてラスボス然として将棋界に君臨する名人。
この人たちの背景や戦う理由がそこかしこに描かれていて、まったく飽きません。
2巻ではあいの対極の存在となる夜叉神天衣が登場しますが、八一と天衣が出会う歴史と背景がわかると涙が出てきます。
3巻は作者が最初一番書きたかった話ということで女性棋士の状況と運命を描きますが、抗って戦う桂香さんの姿に泣いてしまいます。
そして最初作者はここで終わらせようと考えていた5巻、名人との竜王防衛戦。
3連敗で打ちひしがれる八一。
名人は今回竜王を取れば前人未到の通算百期で、全国の期待が名人に集まり八一は全ての人からアウェーの立場になります。
ここで起こった前代未聞の出来事が八一と名人の戦いの運命を変えていきます。
アニメの1期も5巻で終わっています。
5巻まででも感動的な物語です。
同じくアニメ化された将棋を描いた漫画の「3月のライオン」があります。
共通するのはそれらの「名人」が羽生さんを意識して書かれていることです。
「羽生名人」あるいは「羽生七冠」は最強の存在で、誰も敵わないほぼ伝説の存在と化していてどの作品でもラスボスといった感じで屹立しています。
そのためりゅうおうのおしごとや3月のライオンではそのラスボスに対抗する主人公として中学生プロ棋士が設定されます。
そして10代でタイトルを取らせるために理論上大丈夫な竜王としたのです。
10代のタイトルなんて羽生さんしかいない時代でした、ライトノベルだけの現実ではまずない話でした。
ところがその後とんでもない中学生プロ棋士が誕生しました。
藤井聡太。
白鳥先生が書くのを諦めた開幕連勝記録と、ライトノベルの世界だけで羽生以外はありえないと言われていた10代のタイトル、両方とも達成しました。
その後も2冠どころか現在4冠で、これを書いた後は5冠に達するかもしれないという状況です。
作者が現実に負けたと嘆くのもわかります。
6巻以降も激しい戦いは続きます。
特に空銀子が女性で三段となり、その後壮絶な戦いを繰り広げる様子は読んでいても辛いものがあります。
そして毎巻泣かされます。
奨励会篇が終わった後、本当にみんな良かったねと涙が出てしまいます。
イラストのしらび先生も原稿を読んで泣いているので問題ありません。
あと、作者のあとがきも泣かせにかかってきます。
重いんじゃ!
でも、この作品を世に出してくれてありがとうございます。
ライトノベルなので好みはあるかもしれませんが、皆さん是非読んでみてくださいね。
最近のコメント