月の文学館 2019年10月投稿分
今回も昔月の音色に投稿した作品をあげてみます。
第140回で、この時は採用されて読んでもらったものです。
これが番組で私が初めて読まれた作品になります。
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突然だが私は昔UFOを見たことがある。
そんなことを言うと、たいていの友人からは冗談だと思って笑われる。
私も馬鹿馬鹿しくなり、そのうち誰にも言わなくなってしまった。
私も大人になって結婚し、やがて子供が産まれた。
そんなある日、子供と買い物に行った帰り道、
「パパ、あれなあに?」
と子供が空を指さした。
私には何も見えなかったが、あの時の音色が、昔出会ったUFOと同じ音が確かに聞こえたのだ。
「行っちゃった」
そうつぶやく子供の顔を見ながら、懐かしさと寂しさと、そして嬉しさが心をかき混ぜた。
会えなくても会えるものはあるのだ。
私はそっと子供の頭を撫でたのだった。
<end>
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