「ほんとうの憲法」(篠田英朗)
-戦後日本憲法学批判
国際政治学者の篠田先生の本です。
この本は憲法の話と憲法解釈を危うくしている憲法学者の話と、憲法を語る時に必ず上げられる憲法9条の話題を中心として、それがどういう歴史でこうなっているかを示しています。
憲法学者については、立憲主義とは権力を制限することだという抵抗の憲法学にこだわっている様と、その戦前戦後の歴史観が語られます。篠田先生曰くロマン主義だと。
憲法は前文にあるように国際協調主義であり、特に9条に見られるとおり、9条自体は国連憲章2条4項と同じで1928年不戦条約を祖先とします。
『満州事変などを通じて「敵国」が行った侵略行為に国際法が対応できなかった反省から、より包括的に「武力行使」一般を禁止するようになったのが、国連憲章2条4項である』
そして、9条2項は大西洋憲章(国連憲章の前身)にある「武装解除」であり、主権を回復し国連に加盟し国際法を逸脱しない国と認定されて、国際法と憲法に違反しない戦力保持が認められるようになった、とします。
だいたい歴史的にも国際的にもこの考え方が妥当だと思うのですが、憲法学者は違います。
憲法学者はアメリカが憲法を草案したことを無視しようとし、9条が世界で最も先進的で優れているというロマン主義になってしまっている。どうしても反米主義になってしまうのです。
戦前は表側の主権者天皇が、裏側で権力を行使する国家(エリート)に支えられている仕組みが維持されて、戦後は表側の主権者国民が、裏側で権力を行使するアメリカおよび日本国内のエリート層に支えられている仕組みが維持されていると。
憲法学者がこれを無視するのはアメリカの影響が表沙汰になると自分たちの立場が無くなると危惧しているからなんでしょうね。
面白かったところを全部あげると長くなるので書きませんが、憲法の性格や憲法学者の歴史、日本とアメリカの憲法上の比較など興味あることがたくさん書いてあります。
これは現代を生きる私たちが一般教養として知っておくべきことだと思います。
この本は読んでおいた方がいいと思います。
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