月の音色/月の文学館
今回も月の音色、月の文学館に投稿して読まれなかった作品です。
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<隠したつばさ>
その子は誰よりも声に特徴があり、歌も上手だった。
歌手志望の友達の付き添いでオーディションに行った時、試しに君も歌ってよ、としつこく言われて歌ったら、プロデューサーが驚いて友達そっちのけで勧誘されてたっけ。
ボランティアでナレーターをした時にも、ラジオ局の人が慌ててスカウトに来てたっけ。
他にも皆がびっくりする事件はたくさんあった。
けれどもその子は歌手や声優やアナウンサーの方向には行かなかった。
今は結婚して元気にお母さんをしているらしい。
ふと思うのだ。
その子が歌手を目指していたら、今どうなっていたのだろう。
彼女の可能性というつばさの行方を思わずにはいられない。
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