月の音色 月の文学館 過去分
「大原さやか朗読ラジオ 月の音色~radio for your pleasure tomorrow~」の月の文学館に投稿した過去分です。
2020年5月に投稿したものです。
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「空耳」
神殿の巫女様は願いをかなえてくれる。
それを聞いたユミは父様に内緒で神殿に一人向かいました。
けれども大きな神殿で小さなユミは迷子になってしまいました。
泣きながら歩いていると、やがて中庭に出ました。
「どうしたのですか」
振り向くと、青い衣の少女が微笑んでいます。
「巫女様にお願いをきいてもらいたいのです」
「どの様な願いでしょう」
「天に帰った母様にもう一度会いたいのです」
少女は頷き言いました。
「私が空耳の巫女です。この大空の神の耳に声を届けることで皆の願いをかなえます。本当は許しがいるのですが内緒で一度だけ。誰にも言わないと約束できますね?」
「はい、巫女様」
「では、共に母様のことを祈りましょう」
ユミが巫女様と共に祈ると、風が舞いました。
そしてユミは確かに母様の優しい声を聞いたのでした。
風が止み、ユミはお礼を言いました。
巫女様は指を口に当てて悪戯っぽく微笑み
「内緒ですよ」
とおっしゃるのでした。
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