「経済で読み解く大東亜戦争」(上念司)
~「ジオ・エコノミクス」で日米の開戦動機を解明する
大東亜戦争という題名ですが、19世紀の世界経済から始まる経済史講義になります。
まずは金本位制度の勃興と挫折ということで、当初は価値の裏書きのある金本位制度を世界各国が採用して世界経済は活性化したのですが、金の採掘量によって経済が振り回されるという設計上の不具合が目立つことになってしまいます。
そして世界は第一次世界大戦後に金本位制復帰を試み、そして世界恐慌へと突入していったのです。
その当時もリフレ派はいて、リフレ派が正しいことを言っていたのですが日本でも外国でも採用されなかったのです。平成のデフレ派が主導したのと同じことになったのです。
日本では昭和恐慌となり、世界的な金融危機が現れます。
ドイツでは賠償金問題が大きくのしかかってきました。この賠償金問題のためにドイツはわざとデフレを選択したのです。ドイツ経済は沈みまくり、景気低迷からナチスと共産党が伸張します。そして共産党とナチスとの権力争いの結果共産党は敗北、ヒトラーが台頭します。
これに対し日本では高橋是清の活躍により経済V字回復が起こります。ところがここで国粋主義を偽装する北一輝ら、これらはほぼ共産主義者なのですが、高橋是清らを暗殺してしまいます。これで日本経済は坂道を下るように悪化します。
高橋の後任の馬場蔵相が大量の国債を発行し、なんと軍事費に注ぎ込みます。インフレは国民生活を直撃し、危険な思想が流行ることになります。経済低迷のため、普通はありえない、コミンテルンの日本と国民党政府を激突させ、更にアメリカに日本を叩かせ、日本が弱ったところで共産党がいただくという妄想のシナリオを実現させてしまったのです。
そのアメリカも景気低迷で、コミンテルンの反日キャンペーンに引っかかってしまいます。
日本もアメリカとの喧嘩を避けるのが賢明でしたが、統帥権干犯問題で様子がおかしくなってしまいます。そして経済的に困窮していたため、尾崎秀美らコミンテルンのアメリカ陰謀論に引っかかってしまいます。
「スパイが敷いたレールの上を破滅に向かって全力疾走するバカ」
戦前の日本がはまってしまった悲しい現実です。
戦後は米ソ対立によりアメリカの占領政策が転換されます。
朝鮮特需により経済成長の波に乗ることができたのは皆が知る歴史です。
リフレ派と財政緊縮派の争いは100年以上前から、令和の現在に至るまで続いている争いです。
経済から見た歴史観ではありますが、コミンテルンやその仲間みたいなのも100年以上ずっと存在しているというのは困ったものですね。
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