「戦争の地政学」(篠田英朗)
地政学にはマッキンダーに代表される英米系地政学とハウスホーファーに代表される大陸系地政学があります。
マッキンダーの地政学は、ユーラシア大陸中央部のハートランド、それがランド・パワーとなってこれと対を成すシー・パワーの概念からなり、ランド・パワーの膨張をシー・パワーが封じ込めるという図式になっています。マッキンダーのは19世紀のロシアとイギリスのグレートゲームとそれに続く日露戦争を意識しています。
一方、ハウスホーファーの地政学は生存圏のイメージで、ナチス・ヒトラーの生存圏や大東亜共栄圏の構想を体現するものです。
マッキンダー理論とハウスホーファー理論といった英米系地政学と大陸系地政学という対立はずっと続いています。
20世紀はアメリカが主導する国際連合によってマッキンダー理論を源流とする、一方的な国境線の変更の禁止や海洋の自由という流れになっています。しかし大陸系からは英米系が生存圏を押し付けているように見えてしまっているようです。
現在も英米系と大陸系の地政学の考え方の対立は解消されていません。
さて、日本はシー・パワーとして日露戦争を戦いましたが、大陸進出やナチス・ドイツの勃興によって次第に大陸系地政学による生存圏構想の方に寄っていきます。英米系でいうランド・パワーとして進み始めてしまうのです。敗戦後、日本は憲法と国連憲章と日米安保によってシー・パワーに組み入れられることになります。
現在英米系地政学によるランド・パワーの抑え込みと、大陸系地政学による生存圏の確保という二大潮流が見えてきています。ロシアは生存圏のためにウクライナに侵攻し、中国はランド・パワーとシー・パワーの両方を希求する「両生類」として、一帯一路と尖閣・台湾から南シナ海への進出を図っています。
これらに対してNATOとクアッドがロシアと中国の抑えとして睨みを利かせている状況です。
地政学といってもどちらのことを言っているかきちんと見ないといけませんね。
地政学と現代世界の理解として教科書の様な本ですので、そちらに興味のある人は読んでみるといいと思います。
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