日本国憲法と国連憲章は同じ時に作られた
日本国憲法でよく議論に上るのは第9条の戦争否定と戦力不保持になります。一般的には戦争と軍隊の否定と見られています。
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
これは同時代に作られた国連憲章の不戦条約と同じものです。
第1条 締約国は、国際紛争解決のために戦争に訴えることを非難し、かつ、その相互の関係において国家政策の手段として戦争を放棄することを、その各々の人民の名において厳粛に宣言する。
第2条 締約国は、相互間に発生する紛争又は衝突の処理又は解決を、その性質または原因の如何を問わず、平和的手段以外で求めないことを約束する。
これは非武装を目的とするものではなく、自衛権はもちろん認められています。それどころか国防軍程度の保有も認められています。時々自衛隊が憲法違反という人たちがいますが、国連憲章から見れば合法です。
自衛隊は合憲か違憲か
それでも第2項で戦力を保持しないと書いてあるではないかと言う人がいます。そう読んでしまったらまずいだろうというのは置いておいて、これに対して何か答えなくてはいけません。そこで日米安全保障条約があるのです。
2015年に自衛隊と日米安全保障条約とのことについて書いているので時間のある人は見てください。
★自衛隊や集団自衛権に反対する人は、何のために誰のために反対?
http://shirogitsune.cocolog-nifty.com/shirogitsune/2015/07/post-f7e8.html
第2項について文句がある人がいるから懇切丁寧に日米安全保障条約でも書いてあるし、外務省の見解でもそうなっています。ただし外務省解説を見ればやはりちょっと限定的な感じですが。
これも2015年に書いたのですが、人工妊娠中絶と刑法第212条の関係にも似ているなあと思って取り上げてみました。同じにするなという人たちもいると思いますが思考実験としては妥当だと思います。
★中絶と刑法第212条とかもややこしい
http://shirogitsune.cocolog-nifty.com/shirogitsune/2015/09/212-e4a4.html
こういった法律の上書きというのはけっこうあるみたいです。実態へ近づける目的ですね。
日本国憲法と国連憲章は何を願っているのか
同時期に生まれた日本国憲法と国連憲章ですが、19世紀までの軍事が国際紛争を解決するという牧歌的な考え方が第一次世界大戦でこれではまずいと国際連盟を作ったのですが、言い出しっぺのアメリカは参加しないわドイツは莫大な賠償金のせいで変な政権ができるわ日本は無邪気に脱退するわで、結局第二次世界大戦となるわけです。ものすごく端折りましたけど。
戦後にこういうことが二度と起こらないようにと、宣戦布告したら戦争できますというのはなしにしようと、これが国権の発動たる戦争で、戦後はこれまで大きな問題のある戦争は起きませんでした。まあ細かいことを言えばいくらでもあるのですが、今は不問にしておきたいと思います。
そして今回ロシアがウクライナに侵攻したのが、まさに国権の発動たる戦争になっています。ロシアと中国とあと少々は否定していますが世界のその他の国は明確にそう認識しています。国連憲章と日本国憲法の観点から見ればロシアはやってはいけない戦争をやってしまっているので、日本も世界の動きに並んでロシアへの制裁とウクライナへの援助をするのは問題ないとなります。ロシアの友達はいろいろ言うと思いますが、日本国憲法を見るなら否定しないとだめですね。
第二次世界大戦前後の米国側と東側の思い
歴史に戻ると、第二次世界大戦で米国の希望としては、ユーラシアの西側はナチスドイツが蹂躙した地域は戦後解放されて自由諸国自由経済圏に、東側も日本の影響を排除してこれも自由諸国自由経済圏になっていくことが理想だったと思います。ソ連は協力してくれる範囲では仲間として扱っていたでしょう。ところが東欧はナチスから解放されたらソ連の影響下になって衛星国ばかりになってしまいました。西側と東側の国境がソ連ではなく東西ドイツ国境になっていたのです。オーストリアなどはソ連に出て行ってもらうために永世中立国という西ヨーロッパ諸国と軍事同盟が結べない窮屈な立場を押し付けられてしまいました。
そう、永世中立国というのはソ連の準影響下でいなさいという楔なのです。日本で永世中立国を唱えている人がいますが、それはフレンドですね。
そして東アジアは中国大陸が自由な中華民国になるかと思いきや、何故か中国共産党が勝ってしまって朝鮮半島の北部までソ連に取られてしまいました。加えて東南アジアのかなりの部分が共産勢力に食われてしまいました。アメリカが東アジアで得たのは朝鮮半島とベトナムの南部。アメリカは東部アジアから日本軍を排除するのには成功しましたが、日本の代わりに東アジアで頑張らなくてはならなくなりました。朝鮮戦争、ベトナム戦争で多数の戦死者を出すことになったのは皮肉としかいいようがありません。さらには裏庭ともいえるキューバに核ミサイルを配備されそうになり、あわや米ソ開戦という危機まで訪れました。踏んだり蹴ったりですね。
ある時期までは東側諸国がイケイケで伸びていきました。しかしその後共産主義の欠点が露呈し、西側諸国が戦後に経済力を大きく伸ばすことで徐々に勢いが逆転していきました。そしてベルリンの壁、ソ連崩壊となり、また中国が経済開放政策に転換し、ようやくアメリカが思い描いた東欧と中国の開放がなって世界は平和となるかと思われました。
ところがそうはうまくいきませんでした。中国は経済開放はやりましたが、民主化は全く進みませんでした。むしろ民主化と逆行していますし周辺諸国への圧力も大変なものです。ロシアも周辺諸国へ武力で圧力をかけたりしました。本当はこれも国連憲章には違反するのですが、ロシアも中国も常任理事国なのです。ちなみに国連憲章に書いてある常任理事国はソ連と中華民国なのでおかしいのですがね。
この様に、戦後は共産国家の伸張、共産国家の衰退、共産国家の逆襲という順番で来ています。
そして今回ロシアが元同じソ連の友邦ウクライナを侵略したことで、最後の幕が開いたという感じがします。国連決議ではロシアと中国が軌を一にしているので共産国家の最後の闘争といえるかもしれません。最後の覚悟を持っている両国ですから侮れません。
ソ連=ロシアは動く
そして最近ロシアの議員が北海道はロシア領だという発言をしています。一議員の発言と考えてはダメでしょうね、ロシアですから。ただ、これはウクライナの次は日本だという脅しでしょうが、逆に日本としてはロシアは日本も狙っているという証拠として、もし世界がこれを認めれば、日本はロシアへの制裁とウクライナへの援助を一段階上げることができそうです。かなりアクロバティックな政治になりますが、ロシアへの受け身から攻めへと切り替えることができるということです。もちろん日本は軍事的オプションは限定されますが、非軍事であればかなりなことができると思います。
現政権がそこまで考えられるかというと、その勢いは無理かな。
ロシアが日本を暗に敵国認定してきた、ウクライナの時と同じことを考えていると考えてもいいでしょう。ロシアはウクライナを即時に占領できると考えていました。もしかしたら日本も北海道くらいなら即時に占領できると思っているかもしれません。しかし、ウクライナ戦争で見せたロシア軍のちぐはぐさ、極東方面にどれくらい戦力を派遣できるのかといったことを考えると、正気か?、と思わざるを得ません。
しかし、今のプーチン政権だと血迷って開戦する可能性は零ではないかもしれません。
長くなったので今日はここまでにしたいと思います。
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